9年前、初めてそのワインを口にした瞬間のことを、今でも鮮明に覚えています。
「なんてポテンシャルの高いワインだろう」
ボールド・ヒルズ。セントラルオタゴ、バノックバーンの丘に佇む、11ヘクタールの小さなブティックワイナリー。セントラルオタゴのワインといえば、フェルトン・ロードやアミスフィールドの名前がまず挙がるかもしれません。しかし私がずっと心の中に温めてきたのは、もう少し静かな場所にあるこの小さなワイナリーです。
最初の出会い——2017年、試飲商談会
最初に「ボールド・ヒルズ」という名前に出会ったのは、2017年のことです。ある試飲商談会で、リースリング、ピノ・グリ、ピノ・ノワールの3種類を一度にテイスティングする機会を得ました。
グラスを傾けた瞬間、「なんてポテンシャルの高いワインだ」という言葉が自然と口をついて出ました。一切の妥協を感じない品質。土地の個性がそのままグラスに注ぎ込まれたような純粋な味わい。当時の日本では、ボールド・ヒルズの名前を知っている人はほんのわずかでした。だからこそ、この出会いは特別でした。あの日以来、ボールド・ヒルズは私の中で、ずっと大切にしてきた存在のひとつになっています。


ボールド・ヒルズとは
ボールド・ヒルズは、1997年にセントラルオタゴのバノックバーンに創業されたブティック・ワイナリーです。2015年、創業者のハント夫妻が売却先を探していたとき、不思議なご縁で日本企業の三田ホールディングスにバトンが手渡されました。畑の面積はわずか11ヘクタール。世界的なワインメディアで「セントラルオタゴの隠れた実力派」として紹介されることも多い、小規模ながら国際的な評価を確立した蔵元です。
「ボールド(bald)」とは、「禿げた」「むき出しの」という意味。バノックバーンの丘は、ゴールドラッシュ時代の採掘や長年の農業によって木がほとんど生えておらず、スキスト岩とタソック草に覆われた、むき出しの荒野のような景観が広がっています。その風景が、そのままワイナリーの名前になりました。荒涼としているようでいて、どこか凛とした美しさを持つ——そんな土地のイメージが、ワインの個性にも重なります。
何人かのワインメーカーを経て、2024年からはアイルランド出身のオースティンが、その経験をセントラルオタゴの土地に注いで醸造を担っています。フランスのブルゴーニュをはじめ、世界各地で修業を積んだ醸造家の手によって、国際的な洗練さとニュージーランドの土地の個性が同時に宿ったワインが生まれています。
SWNZ(サステイナブル・ワイングローウィング・ニュージーランド)の認証を取得しており、化学薬品に頼らないサステイナブルな農法でブドウを育てています。テイスティングは予約制のみ。静かな丘の上でゆっくりとワインと向き合う、特別な体験を大切にしているワイナリーです。

主力品種はピノ・ノワール、ピノ・グリ、リースリング。そして近年、新たな顔としてブラン・ド・ピノ・ノワールが加わりました。
2018年NZ訪問、ピノ・ノワール2015との出会い
2018年にニュージーランドを訪れた際のことです。ある酒屋を覗いたとき、棚のひときわ目立つ場所にボールド・ヒルズのボトルが並んでいました。ラベルには、複数のコンクールで受賞したメダルが何枚も貼られていました。「やっぱり、認められているんだな」と思いながら手に取り、大切に日本へ持ち帰りました。
帰国後、そのボトルを開けたとき、確信がありました。このワイナリーは、本物だと。2015年ヴィンテージのピノ・ノワール。グラスに注ぐとダークチェリーと乾いたハーブの香りが静かに広がり、バノックバーンの砂利混じりのスキスト土壌と、セントラルオタゴの強烈な日照と大きな寒暖差——その全てがぎゅっと凝縮されたような味わいでした。果実の力強さと、エレガントな骨格。飲み終えた後も、しばらく余韻が口の中に残りました。

2025年、ソムリエの縁で繋がった再会
2017年の出会いから7年余り。2025年に再びボールド・ヒルズとの縁が結ばれました。
あるソムリエの方から「ぜひ紹介したい人がいる」という連絡をいただきました。その方が、ボールド・ヒルズの日本担当の営業マンでした。初めてお会いした瞬間から、ワインへの深い愛情と誠実さが伝わってきました。現地のワイナリーの空気感が、そのまま言葉から伝わってくるような方でした。
今もその縁は続いており、ボールド・ヒルズの新しい情報が届くたびに連絡をいただいています。次にセントラルオタゴを訪れる機会があれば、バノックバーンの丘の上にある予約制のテイスティングルームへ、今度こそ直接足を運びたいと思っています。
昨年からボトリングが始まった「ブラン・ド・ピノ・ノワール」
今回Cave de Uに入荷したのが、「ブラン・ド・ピノ・ノワール」です。昨年からボトリングが始まった、ボールド・ヒルズの新しい顔です。
ピノ・ノワールといえば赤ワインのイメージが強い方も多いかと思います。しかし「ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noirs)」と呼ばれる技法では、黒ブドウを白ワインとして醸造します。ブドウの果汁だけを使い、果皮を取り除いて発酵させることで、色の薄い白ワインが生まれます。フランスのシャンパーニュでも広く使われている伝統的な手法で——あの泡の代名詞「シャンパーニュ」の多くも、ピノ・ノワールやムニエを白ワインとして醸造しています。
見た目は白ワインでありながら、黒ブドウであるピノ・ノワール由来のニュアンスがしっかりと感じられ、複雑なレイヤーがあります。白ワインならではのフレッシュさと軽やかさを持ちながら、同時に深みと余韻の長さも——唯一無二の一本です。オードブルから魚介、さらにはメインのお肉料理まで幅広く寄り添える柔軟性も、大きな魅力のひとつです。

ワイン会での、忘れられないペアリング
先日のCave de Uワイン会で、このブラン・ド・ピノ・ノワールと、忘れられない出会いがありました。
合わせたのは、焼き野菜(ナス、オクラ、ズッキーニ、ヤングコーン)とビーツソースのフレッシュサラダです。ビーツの土っぽい根菜らしい香り、焼き野菜のじんわりとした甘み、ヤングコーンの旨味——それぞれの素材の個性が、ブラン・ド・ピノ・ノワールの柔らかな酸味と深みに出会って、見事にひとつの世界を作り上げていました。我ながら、最高のペアリングだったと思っています。
「野菜からお肉まで幅広く寄り添える、食卓に映えるワインですね」と、参加された方が語ってくれました。その言葉が、このワインの本質をよく表していると思います。食材を選ばない懐の深さ——それが、ブラン・ド・ピノ・ノワールが持つ最大の魅力なのかもしれません。

いつか多くの人に届くことを夢見て
日本ではまだそれほど知られていないボールド・ヒルズ。「知っている人だけが知っている」——その言葉は、今もこのワイナリーにぴったり当てはまります。
しかし、一度このワインを口にした人は、その品質に驚きます。小さな規模でつくり続けること。予約制のみのテイスティング。妥協のない醸造。その全てが、ボールド・ヒルズの品質への誠実さを物語っています。
いつかもっと多くの方に、このワイナリーの素晴らしさを知っていただきたい——Cave de Uのワイン会を通じて、少しずつその扉を開くお手伝いをしていきたいと思っています。
Cave de Uで購入する
ボールド・ヒルズのワインをすべて見る
バノックバーンの11ヘクタール、予約制のブティックワイナリーが贈る全ラインナップ。
— RIESLING —
— ROSÉ —
— PINOT GRIS —
— BLANC DE PINOT NOIR —
— PINOT NOIR —
























コメント