夕方、窓を開けると、昨日までとは違うひんやりした風が入ってきます。キッチンからは、きのこを炒める香ばしい匂い。そんな夜、私はワインセラーの前で、夏とは違うボトルに手を伸ばしたくなります。
夏は「しっかり冷やして、爽快に」。秋はその反対です。温度をほんの少し上げて、香りとコクをゆっくり楽しむ。この記事では、気温が下がるにつれてだんだん飲みたくなるニュージーランドワインを、秋の味覚と合わせてご紹介します。
秋になると、なぜコクのあるワインが飲みたくなるのか
肌寒くなると、温かいスープや煮込み料理が恋しくなりますよね。ワインも同じで、気温が下がると、香りがふくらんでコクのあるタイプが自然とおいしく感じられます。
栗、かぼちゃ、きのこ、脂ののった秋刀魚、鴨やジビエ。秋の食材はどれも旨みが濃く、まろやかな甘みや香ばしさを持っています。こうした料理には、少しふくよかなワインがしっくり寄り添います。
おいしく飲むコツは「冷やしすぎないこと」。冷やしすぎると香りが閉じてしまいます。目安は次のとおりです。
- シャルドネ:10〜13℃(冷蔵庫から出して10分ほど置く)
- リースリング・ゲヴュルツトラミネール:8〜12℃
- ピノ・ノワール:15〜17℃
- シラー・熟成した赤:16〜18℃
①シャルドネ——秋の白は、コクのある一本を
秋に白ワインを選ぶなら、まずはシャルドネを。樽で寝かせたシャルドネは、バニラやトーストのような香ばしい香りと、なめらかでふくよかな口当たりを持っています。この「コク」が、栗ご飯やかぼちゃのグラタン、きのこのクリーム煮、鮭のムニエルと驚くほどよく合います。
普段の夕食には、アストロラーベのマールボロ シャルドネを。メロンやいちじくのような果実味に樽の香りがやさしく溶け込んだ、重すぎず軽すぎない一本です。トリニティ・ヒルのホークスベイ シャルドネも、桃や柑橘のフレッシュな香りで食卓の定番になってくれます。
普段よりちょっといい白を、という日には、ネルソンのノイドルフが造るティリティリ・シャルドネを。ノイドルフはネルソンのシャルドネを代表する造り手で、ティリティリはその入口となる一本です。リンゴや白桃のフレッシュな果実味に、ほどよい酸とほんのりバニラの香り。エントリーの位置づけでも丁寧な造りは変わらず、鮭のムニエルや栗ご飯にも自然と寄り添います。ノイドルフについてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。
週末に少し贅沢をしたい日は、マーティンボローのオラテラを。樽のほどよい風味に、白桃のようなやさしい甘さの香りが重なる、個性豊かな白です。
特別な夜には、フェルトンロードの「ブロック6」を。フェルトンロードは畑をいくつもの区画(ブロック)に分け、区画ごとにワインを造っています。初めて訪れたとき、チーフワインメーカーのブレア・ウォルターさんはブロック6の畑で「だから私たちはブロック別にワインを作るんです。混ぜてしまうともったいない」と笑っていました。凝縮した果実味と、背筋の伸びるような爽やかな酸。ゆっくり向き合いたい一本です。
料理との組み合わせは、ニュージーランドのシャルドネに合う料理もあわせてどうぞ。

②ピノ・ノワール——夏より少し温度を上げて
夏の記事では、軽やかなピノ・ノワールを「少し冷やして」楽しむ方法をご紹介しました。秋は、その温度を少し上げてみてください。15〜17℃くらいになると、香りがふわっと開きます。チェリーやラズベリーの奥から、スミレやスパイスの香りが立ちのぼってくる。この広がりこそが、秋のピノ・ノワールの楽しみです。
やさしい渋みと豊かな酸を持つピノ・ノワールは、きのこのソテーや鴨のローストはもちろん、すき焼きや焼き秋刀魚といった和の食卓にも自然と溶け込みます。
普段飲みには、3本をご用意しました。シャルドネの章でもご紹介したアストロラーベのピノ・ノワールは、熟したプラムやダークチェリーの果実味に、ほんのりスモーキーな樽の香り。なめらかな渋みで、飲みごたえもしっかりあります。スミレやチェリーの華やかな香りが広がるミーシャズ・ヴィンヤードのカンタータは、上品でエレガントなタイプ。パリサー・エステートのペンカロウは、チェリーと木苺の軽やかな果実味で渋みも穏やか。同じ価格帯でも、産地や造り手によって表情がこんなに違います。飲み比べてみるのも、秋の夜の楽しみです。
特別な夜には、ボールドヒルズの「YASUHIRO」2018を。リリースから時間がたち、少し落ち着いてきた頃合いのピノ・ノワールです。ブラックベリーやスパイスの豊かな香りと、きめ細かな渋み。若いワインとはひと味違うまろやかさが出てきています。

ほかのおすすめ③リースリング——秋の和食に
ここからは「ほかにもぜひ試してほしい」品種です。
リースリングは、キリッとした酸と柑橘や白い花の香りを持つ白ワイン。すだちを搾った秋刀魚の塩焼き、豚の生姜焼き、きのこの炊き込みご飯。甘辛い味付けや柑橘の香りに、リースリングの酸がぴたりと寄り添います。
手頃に楽しむなら、繊細な酸が魅力のシャーウッド・エステート ストラタム。ミーシャズ・ヴィンヤードのライムライトは、ライムやマンダリンの香りに熟した果実の甘みがほどよく溶け込んだ、やや辛口のスタイルです。
少し特別な一本なら、ペガサス・ベイのリースリングを。セミナーでは「ときには貴腐菌がつくほど、限界まで熟させてから収穫します」というお話を聞きました。そうして生まれる、ほんのりした甘みと爽やかな酸のバランスは、甘辛い料理と格別です。
ちょっと冒険してみたい方には、ヴィータ ゾエの「ビーサイド」リースリングを。ブドウを皮ごと12日間漬け込み、20ヶ月かけてじっくり熟成させた一本です。無濾過・無清澄で添加物も使わない、自然な造り方をしています。色は普通のリースリングより濃く、ドライフルーツや蜂蜜のような香りに、皮からくるほのかな渋みと旨み。オレンジワインに近い味わいで、きのこの炊き込みご飯や味噌・醤油を使った料理、熟成チーズとよく合います。オレンジワインについてはこちらの記事もどうぞ。
ペアリングはリースリングに合う料理もぜひ。

ほかのおすすめ④ゲヴュルツトラミネール——スパイスと香りの秋に
初めて名前を聞く方も多いかもしれませんが、香りを嗅いだ瞬間に忘れられなくなる品種です。
グラスに注ぐと、ライチやバラの花のような甘く華やかな香りがふわっと広がります。でも、飲んでみると甘ったるくはありません。名前の「ゲヴュルツ」はドイツ語で「スパイス」のこと。その名のとおり、ほんのりスパイシーな香りも感じられます。
この香りは、中華料理やカレー、エスニック料理と相性抜群。意外なところでは、柿と生ハム、熟成したチーズにもよく合います。
ご紹介する3本はどれもマールボロのワインで、普段の食卓で気軽に楽しめる価格です。ライチとバラの香りをまっすぐに楽しめるフイア。マールボロらしい爽やかな酸で、華やかながらすっきりと仕上がったローソンズ・ドライヒルズ。
そしてラブブロックは、エリカさんとキムさんの夫妻が、アワテレ・ヴァレーの丘の上で営むワイナリーです。鶏や羊、牛など多くの生き物と共生するオーガニックファームを目指し、オーガニックとヴィーガンの認証にもこだわってワインを造っています。バラやライチの華やかな香りに、ほどよい甘みと爽やかな酸。土地と自然を大切にする造り手の姿勢が伝わってくる、みずみずしい一本です。香りのある白に挑戦してみたい方に、ぜひ。
⑤熟成ワイン——秋の夜長に、時間が育てた一本を
夏の記事では「ニュージーランドワインはフレッシュなうちに楽しまれることを前提に造られているものが多い」と書きました。でも、実はそれだけではありません。良いニュージーランドワインは、寝かせることでまったく違う表情を見せてくれます。
熟成すると、果実の奥から蜂蜜やトースト、ドライフルーツのような複雑な香りが現れ、口当たりはまろやかに、角がとれてすっと体になじむようになります。
フェルトンロードを再訪したとき、アシスタントワインメーカーのブライアン・クラッセンさんはセラーで「創業1997年から、毎ヴィンテージを保管しています」「熟成させたワインがどんなふうに変わるかを、私たちも知りたいんです」と話してくれました。造り手自身が、時間がワインをどう変えるかを楽しみにしている。そのことがとても印象的でした。
ここでご紹介するのは、10年以上の時を重ねた白と赤。ほかのお店ではなかなか出会えない、Cave de Uならではのワインです。白は12〜14℃、赤は16〜18℃くらいで。きのこのリゾットやローストチキン、熟成チーズと。もちろん、ワインだけでゆっくり過ごす夜にも。
熟成ワインの楽しみ方は、バックヴィンテージのすすめやヴィレッジセラーズのオープンセラーで聞いた、ワインと時間の話もぜひ。

⑥シラー——深まる秋に、スパイスの香る赤を
夜にコートが必要になってきたら、シラーの出番です。
シラーは、黒胡椒のようなスパイスの香りが特徴の赤ワイン。ブラックベリーのような黒い果実に、ピリッとしたスパイスが重なります。ニュージーランドのシラーは、オーストラリアの力強い「シラーズ」とは違う、スパイシーで上品なスタイルです(違いはこちらの記事で)。
産地として知られるのが、北島ホークスベイの「ギムレット・グラヴェルズ」。かつて川が流れていた跡の砂利の土地で、砂利が日中の熱を蓄えて夜にゆっくり放出します。その温かい畑から、凝縮感のあるシラーが生まれます。
この章の主役は、トリニティ・ヒルの「ギムレット・グラヴェルズ シラー」。トリニティ・ヒルのワインメーカーは「シラーはすでに香り豊かで美しい。小さな新樽のオーク香を重ねると、ワインが隠れてしまう」と話しています。樽で飾るのではなく、ブドウそのものの香りを大切にした、骨格のある一本です。
気軽に楽しむなら、同じトリニティ・ヒルのホークスベイ シラーや、レヴレット・エステートのホークスベイ シラーを。ラムや鹿などのジビエ、ビーフシチュー、黒胡椒をきかせたステーキと合わせてみてください。ギムレット・グラヴェルズについてはトリニティ・ヒルの記事でも詳しくご紹介しています。

秋の食卓に合わせるなら
秋の料理に迷ったら、この組み合わせを参考にしてみてください。
- 栗ご飯・かぼちゃのグラタン・きのこのクリーム煮:シャルドネ
- きのこのソテー・鴨のロースト・すき焼き:ピノ・ノワール
- 秋刀魚の塩焼き・豚の生姜焼き・炊き込みご飯:リースリング
- 中華・カレー・柿と生ハム:ゲヴュルツトラミネール
- きのこのリゾット・熟成チーズ:熟成ワイン
- ジビエ・ビーフシチュー・ステーキ:シラー
ホームパーティーなら、香りの華やかな白から始めて、メインでシャルドネやピノ・ノワールへ。夜が更けたらシラーや熟成ワインへ。軽やかなものから順に開けていくと、秋の夜がゆっくり深まっていきます。

価格帯で選ぶ秋のワイン
| 価格帯 | おすすめシーン |
|---|---|
| 〜4,000円 | 平日の夕食に、秋の味覚と気軽に |
| 4,000〜7,000円 | 週末の食卓やホームパーティーに |
| 7,000円〜 | 特別な秋の夜、大切な人と(フェルトンロードや熟成ワイン) |
普段飲みの一本と、とっておきの一本。組み合わせて揃えておくと、秋の夜がもっと楽しくなります。
Cave de Uで購入する
今回ご紹介したワインはすべて、Cave de Uのオンラインショップからご購入いただけます。
Chardonnay
— シャルドネ —
Pinot Noir
— ピノ・ノワール —
Riesling
— リースリング —
Gewürztraminer
— ゲヴュルツトラミネール —
Aged Wine
— 熟成ワイン —
Syrah
— シラー —

























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