ノイドルフとは?ニュージーランド最古クラスのシャルドネが生まれるネルソンの奇跡

グラスに注いだシャルドネを一口飲んだ瞬間、思わず手が止まりました。

フレッシュな柑橘の香り、やわらかなクリームの質感、そしてどこまでも続く長い余韻。「なんと繊細で美しいシャルドネだろう。この長い余韻は一体どんな気候や土壌から生まれるんだろう。」

答えは、ニュージーランド南島の北端に位置する小さな産地、ネルソンでした。そして、そのシャルドネを45年間作り続けているワイナリーの名前が、ノイドルフです。


目次

ノイドルフとは

ノイドルフは、1978年にティム・フィン氏とジュディ・フィン氏夫妻が設立したワイナリーです。最初の収穫は1981年。2026年で45回目の収穫を数えるこのワイナリーは、ニュージーランド南島でも最古クラスのシャルドネ生産者のひとつです。

ワイナリーの名前「ノイドルフ」はドイツ語で**「新しい村」**を意味します。アッパームーテリーという村はもともとドイツ系移民が多く住んでいた地域で、その歴史が名前に刻まれています。

夫妻がネルソンに土地を購入した理由は、土壌でした。ティム氏は北向きの斜面と特別な土壌の可能性に惹かれ、誰もほとんどブドウを育てていなかったこの地に踏み込みました。その勇気ある決断が、今日のノイドルフの礎になっています。

現在は、ロージー・フィン氏(マーケティング&セールスディレクター)とトッド・スティーブンス氏(ワインメーカー)が二人三脚でワイナリーを率いています。トッドは2012年に就任し、それ以前はセントラルオタゴのフェルトンロードで腕を磨いた人物です。そのつながりから、フェルトンロードとノイドルフは今も深い親交を持ち続けています。

ロージー氏は「絶対に家業は継がない」と言ってロンドンへ渡り、デザインと写真を学びました。ところがロンドンのワインバーで働くうちにワインの世界に魅了され、「やっぱり継ぎます」と帰国を決意。帰国後は母親に「履歴書を送ってください」と言われて書類選考を通過してから採用された——そんなエピソードが、この家族らしい誠実さを物語っています。

ロージーさんと私


ネルソンという産地

ニュージーランドのワインといえば、多くの方が「マールボロのソーヴィニヨン・ブラン」を思い浮かべるでしょう。ところがネルソンは、マールボロとは山脈で隔てられた全く別の産地です。

ネルソンはマールボロの西側に位置し、両産地の間には高い山脈が連なっています。気候を決定づけるのは、北西のオーストラリア方面と、南島と北島の間に広がるタズマン湾——両側を海に囲まれた海洋性気候です。

ロージー氏によると「夏のピーク時でも畑の中で32度を超えることはほとんどない」とのこと。マールボロやセントラルオタゴと比べると格段に涼しく、果実がゆっくりと均等に熟します。過熟しにくいネルソンの環境が、ノイドルフのワインに共通する繊細さとエレガンスの源泉です。

毎日午後3時ごろには海からの涼しいそよ風が入り込み、自然な酸を保ちながら健全にブドウが育つ——その恵まれた環境が、このワイナリーの個性を作り上げています。

ネルソンのワイン畑と山並み


ムーテリー土壌の秘密

ノイドルフの畑があるムーテリーの土壌は、氷河時代に形成された特別な地層です。

古代の花崗岩が数百万年かけて風化し、粘土質と砂利が混在した独特の土壌が生まれました。鉄分を含む粘土は有機物が少なく、ブドウにとっては「肥沃すぎない」環境。砂利が優れた水はけをもたらし、根が地中深くへどんどん伸びていきます。

ホームブロックの古木は、根が5メートル以上も地中に入り込んでいます。水分と養分を求めて深く伸びた根が、土壌のミネラルをじっくりと吸収する。その結果、収量は少なく、果実は小粒で高凝縮になります。

「ムーテリーの土壌を称えるワイン造りをしたい」——それがノイドルフの一貫した哲学です。


3つのブロックとワインの個性

ノイドルフには、ホームブロック・トムズブロック・ロージーズブロックという3つの畑があります。すべて北向きの斜面で、有機農業の認証を取得しています。

ホームブロック——南島最古クラスの老木

1978年に最初に植えられたホームブロックは、南島でも最古クラスのシャルドネ畑です。当時、近くで同じ時期に植えていたオーストラリア出身の生産者ハーマン氏が「ヨーロッパでフィロキセラが猛威を振るうのを見た。接ぎ木にした方が良い」と助言してくれました。

※フィロキセラとは
ブドウの根に寄生して樹液を吸い、樹を枯死させる体長1ミリほどのアブラムシの一種です。19世紀後半にヨーロッパのブドウ畑を壊滅寸前に追い込んだことで知られており、現在ではフィロキセラへの耐性を持つアメリカ原産の台木に接ぎ木する手法が世界標準となっています。

その助言に従ったことで、ホームブロックのオリジナルの苗木はそのまま生き続けています。47年近く経ったいまも植え替えの必要がなく、深く伸びた根が土壌のミネラルを豊かに吸収しています。

トムズブロック——隣人から受け継いだ畑

「トム」とはもともとこの土地を持っていた隣人の名前です。1999年にその土地を購入してブドウを植えたのがトムズブロック。ホームブロックより約20年若く、果実味がより前面に出た活き活きとしたスタイルが特徴です。ピノ・ノワールはこのブロックから生まれています。

ロージーズブロック——クリスマスに届いたサプライズ

3つ目のブロックには、長らく正式な名前がありませんでした。「ヒルズブロック」と呼ばれていたこの畑に、あるクリスマスに大きなサインが立てられました——「Neudorf Rosie’s Block」と。

ロンドンから帰省したロージー氏を連れてきた母親のサプライズ。その看板を見た瞬間、彼女は涙が止まらなかったと言います。ワイナリーの一人娘でありながら、隣人のトムの名前だけが瓶に刻まれていた——そのことにも少し申し訳なさを感じていたロージー氏へのプレゼントでした。「その後すぐに、もう家業を継ぐのをためらわなかった」と彼女は語っています。


シャルドネへのこだわり

ノイドルフは、シャルドネを45年間一度も休まず作り続けてきた唯一のワインです。

醸造は100%自然発酵(培養酵母を使わない)、無清澄。使うオークはフランス産フレンチオークのみ。新樽比率は**15%**と抑えめで、ミディアムトーストの樽で12ヶ月かけて熟成させます。その後4ヶ月、ステンレスタンクでゆっくりと沈殿させてから瓶詰め。長い時間をかけて仕上げた透明感のあるシャルドネです。

このシャルドネを世界に知らしめたのは、1991年のヴィンテージです。シドニーのワインテイスティングで、このホームブロック シャルドネがフランスのピュリニー・モンラッシェと間違えられたのです。世界最高峰の白ワイン産地と同格の評価——それはニュージーランドのシャルドネが世界に通じることを証明した瞬間でした。

さらに2014年ヴィンテージでは、ニュージーランドのマスター・オブ・ワイン(MW)であるボブ・キャンベル氏が100点満点を付与。その後、100点評価はフェルトンロードのシャルドネにも出ましたが、100点ワインを生んだ産地として、ノイドルフとフェルトンロードは今も特別な関係で結ばれています。

余談ですが、私がフェルトンロードを訪問した際、ワインメーカーのブレア氏が「ニュージーランドの中で最も評価している、私が好きなシャルドネのひとつがノイドルフです。ぜひ訪問した方がいい」と強く勧めてくれました。「フェルトンロードの以前のアシスタントワインメーカーが、今はノイドルフでワイン造りをしているから、今でも深い親交があるんだ」とも。

その言葉が、このワイナリーの実力をなにより雄弁に語っていると感じました。


ノイドルフの近年の新しい試みが、アンフォラ シャルドネです。スペイン産の素焼き陶器「アンフォラ」を使い、ロージーズブロックの3分の1の果実を醸造します。同じ果実から、オークとアンフォラという2つのアプローチで生まれる2本のシャルドネ——これが2021年から商品化された、ノイドルフの新たな挑戦です。

ワインメーカーのトッドさん。左に映っているのがアンフォラタンク。


ピノ・ノワールの「静かな卓越性」

ノイドルフはシャルドネで知られますが、ロージー氏が誇りを持って語るのがピノ・ノワールでもあります。

「誰かがうちのピノ・ノワールを『静かな卓越性(quietly excellent)』と表現したんですが、それはとても素敵な言い方だと思います」と彼女は語ります。

ネルソンの涼しい気候は、ピノ・ノワールに旨味・森の香り・スパイスという個性をもたらします。涼しいヴィンテージは白胡椒のようなニュアンス、温暖なヴィンテージは黒胡椒のような引き締まった風味——毎年少しずつ表情が変わります。

醸造は100%除梗(茎をすべて取り除く)。理由は「ネルソンのグリーンな旨味を押しつけすぎないため」とのこと。除梗した果実を約20日間、ステンレスタンクで果皮と一緒に発酵(マセラシオン)させた後、樽に移して10ヶ月熟成無清澄・無濾過で瓶詰めし、ワインが持つ本来の複雑さをそのまま届けます。


サステイナビリティへの取り組み

ノイドルフは環境への責任を、ワイン造りの核に置いています。

屋根には太陽光パネルが設置され、年間を通じて自家消費を上回る電力を送電しています。畑はすべてオーガニック認証を取得し、農薬・化学肥料は使用しません。除草には羊を活用し、ボトルは軽量ガラスを採用。そして全てのワインは魚類や動物由来成分を使わないヴィーガン対応です。

ロージー氏が語る中で、特に印象的だったのが気候変動への言及でした。「父が収穫を始めた頃と比べると、今では収穫終了が4週間早まっています」——農業の現場で、気候変動は数字ではなく身体で感じられる現実です。だからこそ、「自分たちが使っている土地を、前よりも良い状態で次の世代に渡すこと」がノイドルフの最大の責務だと彼女は言います。


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Cave de Uで取り扱い中のノイドルフ全ラインナップ。

— CHARDONNAY —

NEUDORF

ノイドルフ ティリティリ シャルドネ 2023

ティリティリ シャルドネ 2023

¥5,500(税込)

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NEUDORF

ノイドルフ ロージーズ・ブロック ムーテリー シャルドネ 2023

ロージーズ・ブロック ムーテリー シャルドネ 2023

¥8,800(税込)

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NEUDORF

ノイドルフ ロージーズ・ブロック アンフォラ シャルドネ 2023

ロージーズ・ブロック アンフォラ シャルドネ 2023

¥8,800(税込)

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NEUDORF

ノイドルフ ホーム・ブロック ムーテリー シャルドネ 2023

ホーム・ブロック ムーテリー シャルドネ 2023

¥16,500(税込)

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— PINOT NOIR —

NEUDORF

ノイドルフ トムズ・ブロック ムーテリー ピノ・ノワール 2022

トムズ・ブロック ムーテリー PN 2022

¥6,380(税込)

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NEUDORF

ノイドルフ ホーム・ブロック ムーテリー ピノ・ノワール 2022

ホーム・ブロック ムーテリー PN 2022

¥11,000(税込)

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— TIRITIRI / OTHER —

NEUDORF

ノイドルフ ティリティリ ピノ・グリ 2023

ティリティリ ピノ・グリ 2023

¥4,400(税込)

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NEUDORF

ノイドルフ ロージーズ・ブロック ムーテリー アルバリーニョ 2024

ロージーズ・ブロック アルバリーニョ 2024

¥5,830(税込)

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