冬のセントラルオタゴで、ブレアが教えてくれたこと——フェルトンロード、最初の訪問

東京の試飲会の会場に、フェルトンロードのテーブルがありました。

ワインを差し出してくれたのは、チーフワインメーカーのブレア・ウォルターその人でした。来日中のブレアが自らワインを注ぎながら、一人一人と言葉を交わしていました。私も注いでもらい、ワインを口にしながら話し込むうちに、気づけばかなりの時間が経っていました。

一通り話し終わったところ、名刺を交換しながら私は思い切って言いました。「じつは2週間後に、セントラルオタゴへ行く予定があるんです」。するとブレアはすぐに目を輝かせて答えました。「ぜひ来てください」と。それがすべての始まりでした。


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冬のバノックバーンへ

2024年6月、ニュージーランドの南半球では真冬にあたります。

クイーンズタウンから車を走らせること約40分。バノックバーンの台地に入ると、景色がまるで変わりました。乾いた空気、茶色と灰色が混じった岩肌の丘、そしてその合間を縫うように続くブドウ畑。緑はほとんどなく、落葉したブドウの木が枝だけを空に向けてそびえています。

「冬に来てよかったです」とブレアは言いました。「葉がある時期は、畑の見た目が同じように見えてしまいます。でも冬になると、土の色や質感、木の形まで全部が見えてくる。畑が正直になるんです」。

フェルトンロードの畑は、バノックバーンの中でもいくつかのブロックに分かれています。土壌の組成も標高も、ブロックによって少しずつ異なります。その違いを一つひとつ足で歩きながら説明してくれるブレアの姿は、研究者というより、この土地を深く愛している人のそれでした。


区画を歩く、冬の時間

ブレアは畑の中を、ゆっくりと案内してくれました。

「ここがブロック2です」と立ち止まった場所では、ブドウの木の根元の土を少し掘り起こして見せてくれました。表面はサラサラとした砂質ですが、少し掘ると石が増えてきます。「この石が大事なんです。日中に熱を蓄えて、夜に放出する。そのおかげでブドウはゆっくりと、均一に熟していきます」。

ブロック6の区画では、土の層が違っていました。石の大きさ、土の色。同じバノックバーンの畑でも、ブロックによってこれだけ個性が変わるのかと、改めて驚きました。「だから私たちはブロック別にワインを作るんです。混ぜてしまうともったいない」とブレアは笑いました。

除草剤も殺虫剤も使わず、バイオダイナミック農法で育てるフェルトンロードの畑は、冬でも土の中に命があるように感じられました。


日本人で、最初の一口

畑の案内を終え、テイスティングルームへ移動しました。

木のテーブルに並べられたのは、数種類のボトルです。その中に、まだリリース前のものがありました。「このリースリングはニューヴィンテージです。まだ日本には届いていません」とブレアは言い、少し誇らしげに、しかし穏やかな口調で続けました。「おそらくあなたが、このヴィンテージを飲んだ最初の日本人です」。

グラスに注がれたリースリングは、澄んだ淡い黄金色でした。香りを嗅ぐと、果実の清澄さと、どこかミネラルのような冷たい印象が混ざり合っています。口に含むと、果実の鮮やかさと深みが同時に広がり、波が引くようにすっと消えていきます。こんなに穏やかで、こんなに存在感のあるリースリングを飲んだのは、はじめてだと思いました。

ピノノワールも然り。華やかすぎず、しかし薄くもない。飲んだあと、余韻が非常に長く続きます。「どうですか」とブレアが聞きました。「美しいです」と答えるしかありませんでした。


土地を引き出す、という哲学

一日を共にして、ブレアという人物がだんだんわかってきました。

声は大きくなく、話し方も穏やかです。しかしワインや畑の話になると、言葉が増えていきます。彼の言葉のひとつひとつに、本当の意味での好奇心が宿っていて、彼の温厚さと穏やかさが醸し出す語り口から、グイグイと話に引き込まれていきます。

「私たちの仕事は、この土地が持っているものを引き出すことです。人間が加えるのではなく、土地が言いたいことを丁寧に聞き取るようにワインを作る」。

その言葉は、ワイン作りの話というよりも、生き方の話のように聞こえました。フェルトンロードのワインを口にするたびに、私はバノックバーンの冬の景色と、このブレアの言葉を思い出します。


次の訪問へ

この初訪問から1年後、私はお客様たちとともにフェルトンロードへ再び向かうことになります。

春のバノックバーン、発酵中のタンクから聞こえてきた音、そしてテイスティングルームで涙した参加者——その話は、次の記事でお届けします。

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