バノックバーンの畑に立ったとき、思わず深呼吸しました。
乾いた空気、空の青さ、そして地面に点在する金色の岩——片岩(シスト)と呼ばれるこの岩が、この土地のすべてを語っているような気がしました。「ここで育ったブドウは、どんな味がするんだろう」——そんな期待を胸に飲んだフェルトンロードのバノックバーン ピノ・ノワールは、その問いへの完璧な答えでした。
バノックバーンとはどんな土地か
バノックバーンは、ニュージーランド南島のセントラルオタゴに位置するサブリージョンです。セントラルオタゴの中でも、特に乾燥が厳しく、昼夜の気温差が最も大きいエリアとして知られています。
夏の日中は35度を超えることもありますが、日が沈むと急激に気温が下がり、朝晩は10度台まで冷え込みます。この極端な寒暖差が、ブドウに糖とフレッシュな酸のバランスをもたらします。
土壌は片岩(シスト)と砂利質が主体です。片岩は金属光沢を持つ岩で、昼間に太陽熱を蓄え、夜に放射するという特徴があります。水はけが非常に良く、ブドウの根はミネラル豊富な岩盤に向かって深く伸びていきます。この地質こそが、バノックバーンのワインに感じる「土の深み」と「キリッとした後味」の源泉です。
クロムウェル盆地の地形に守られたこのエリアは、ニュージーランドで最も大陸性気候に近い産地。少ない降水量、豊富な日照、大きな寒暖差——この三つが揃う場所でしか生まれないワインがあります。
フェルトンロードの哲学
フェルトンロードは1992年に設立された、バノックバーンを代表するワイナリーです。現オーナーのナイジェル・グリーニングが2000年に引き継いでから、このワイナリーは大きく変わりました。
最大の転換点は、**バイオダイナミック農法(ビオディナミ)**の本格導入です。農薬や化学肥料を使わないのはもちろん、農作業のタイミングを月の満ち欠けや星の動きに合わせ、農園全体を一つの生命体として管理する考え方です。「畑が健康であれば、ワインは自ずと良くなる」——それがフェルトンロードの信念です。
醸造でも、人の手を極力加えません。自然発酵(培養酵母を使わず、空気中の野生酵母のみで発酵させること)、無濾過・無清澄(フィルタリングなし)、そして硫黄の使用も最小限。ワインはブドウが持つものだけで造られます。
私がフェルトンロードを訪問した2024年、ワインメーカーが教えてくれた言葉が今でも心に残っています。「良いワインは畑で作られる。私たちは邪魔をしないようにしているだけだ」。

テイスティングノート
グラスに注ぐと、深みのある透明感のあるルビー色。エッジにかけてわずかにガーネットがかかっています。
香りを嗅ぐと、最初にチェリーとブラックベリーの果実が飛び込んできます。しばらく待つと、黒胡椒やクローブのスパイス、大地のニュアンス、かすかに煙のような香りが重なってきます。片岩土壌から来る「ミネラル感」は、ツーンとした独特のキレとして感じられます。
口に含むと、なめらかでシルクのような口当たり。渋みはありますが、決してきつくなく、チョコレートのようにとろけるような質感です。果実の甘さとフレッシュな酸が絶妙なバランスで、飲み込んだ後も長い余韻が続きます。
バノックバーン 2023年は、比較的涼しかったヴィンテージ。フレッシュな酸が際立ち、エレガントなスタイルに仕上がっています。今飲んでも十分楽しめますが、2027〜2030年頃に向けてゆっくり熟成させると、また違った深みが出てくるでしょう。

合わせてみたい料理
バノックバーンのピノ・ノワールは、食事との相性が抜群です。
鴨料理との相性は特に見事です。鴨のロースト、鴨のコンフィ——脂の甘さとワインの果実味が絡み合い、互いを引き立て合います。
ラム料理にも最高のマリアージュ。バノックバーン産のラムとバノックバーンのピノ・ノワール——同じ土地で育ったもの同士の組み合わせは、格別です。
きのこ料理との親和性も高いです。松茸のソテー、ポルチーニのパスタ、きのこのリゾット。土の香りを持つきのことワインが、お互いの「大地感」を引き出し合います。
実は、和食との相性も見逃せません。すき焼き、鰻の蒲焼、醤油ベースの煮物——日本の料理に合うニュージーランドのピノ・ノワールは意外と多く、バノックバーンはその筆頭です。

ヴィンテージガイド
2023年は、セントラルオタゴ全体として涼しい条件が続いたヴィンテージです。バノックバーンは特に、酸がしっかりと保たれた上品な仕上がり。パワーよりもエレガンス——果実味は穏やかですが、余韻の長さとキレは現行ヴィンテージ随一です。
今から2〜3年後(2027〜2028年)に、このワインはさらに表情が豊かになります。今楽しんでも良し、少し待ってから開けても良し。どちらの選択肢も正解です。
フェルトンロードのエントリーライン「バノックバーン」は、シングルヴィンヤード(単一畑)の「コーニッシュポイント」「カルヴァート」「マックミュアー」へのステップアップにも最適な入口です。同じ哲学から生まれた4つのピノ・ノワールを飲み比べると、土壌と区画の違いが如実にわかります。
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— PINOT NOIR —
— CHARDONNAY / RIESLING —









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