「フェルトンロードのワインを一度飲んだら、ニュージーランドワインの見方が変わる」。
そんな言葉を、ワインの世界で何度も聞いてきました。実際に私はフェルトンロードを2度訪問し、チーフワインメーカーのブレア・ウォルターと畑を歩き、醸造中のタンクの前に立ち、ブロック別のワインをグラスで飲み比べました。その体験が、このガイドの土台になっています。
フェルトンロードとは何か。なぜ世界から評価され続けるのか。どのワインから始めればいいのか——この記事でまとめてお伝えします。
フェルトンロードとは
フェルトンロードは、ニュージーランド南島・セントラルオタゴのバノックバーン地区に拠点を置くワイナリーです。1997年の創業以来、チーフワインメーカーはブレア・ウォルターただひとりが務め続けています。
小規模なスタッフ体制でありながら、そのワインはアメリカ・ヨーロッパ・アジアへと世界中に輸出されています。権威あるワインメディアの「世界トップワイナリー」に毎年のように名前が挙がり、ニュージーランドを代表するワイナリーとして国際的な評価を確立しています。
フェルトンロードのワインが特別である理由は、ひとつの確固たる哲学にあります。「この土地が持っているものを引き出す。人間が加えるのではなく、土地が言いたいことを丁寧に聞き取るようにワインを作る」——ブレアの言葉です。その哲学が、畑の管理から醸造のすべてに一貫して貫かれています。

セントラルオタゴとバノックバーンという土地
フェルトンロードのワインを理解するには、まずバノックバーンという土地を知ることが欠かせません。
セントラルオタゴはニュージーランド南島の内陸に位置し、世界で最も南に位置するワイン産地のひとつです。その中でもバノックバーンは、フェルトンロードが拠点を置く特別な区画として知られています。
この土地を形成しているのは、氷河によって削られた片岩と砂岩の地層です。表土は砂礫質で水はけが非常によく、ブドウの根は水を求めて深く地中へと潜り込みます。その過程で土壌のミネラルを吸収し、ワインに独特の緊張感と複雑さをもたらします。
昼夜の寒暖差も大きな特徴です。夏の最高気温が30℃を超える一方、夜は急激に冷え込みます。この寒暖差がブドウの熟成をゆっくりと進め、果実の香りを凝縮させながら自然な酸を保ちます。降雨量は非常に少なく、乾燥した環境でストレスを受けたブドウの木は、わずかな果実に力を集中させます。
ピノノワールとシャルドネ、そしてリースリングが、この土地で最大の個性を発揮します。
バイオダイナミック農法——土地を生かす哲学
フェルトンロードは除草剤も殺虫剤も使いません。化学肥料もなく、農薬の使用も最小限です。採用しているのはバイオダイナミック農法です。
バイオダイナミックとは、農場全体をひとつの生命体として捉える農法です。月の満ち欠けや天体の動きを農作業のリズムに取り入れ、牛糞やハーブを使った調合材で土壌の微生物を活性化させます。畑の自然なバランスを維持しながら、土地本来の力でブドウを育てることを目指します。
醸造においても、この哲学は一貫しています。発酵は天然酵母のみ。清澄も濾過も行いません。亜硫酸の添加は最小限に抑え、ブドウが持つ本来の個性をできる限りそのままボトルに封じ込めます。
2025年10月にお客様をお連れした際、アシスタントワインメーカーのブライアンがタンクの蓋を開け、「耳を近づけてみてください」と言いました。タンクの中から、プチプチという発酵の音が聞こえてきました。「シャルドネが発酵しています」という言葉とともに、ワインが生きているということをそこにいた全員が感じた瞬間でした。人の手を限りなく減らし、自然の力に委ねているからこそ生まれる、あの音だったと思います。

ブロック別ワインの違いと選び方
フェルトンロードの最大の特徴は、同じ品種でも区画(ブロック)ごとに別のワインとしてリリースしていることです。土壌の違いがそのままワインの個性になることを、正直に表現するためです。
シャルドネ
バノックバーン シャルドネは、複数のブロックのブドウをブレンドした入門ワインです。フレッシュな酸と豊かな果実が調和しており、フェルトンロードのシャルドネを初めて飲む方に最適です。
ブロック2 シャルドネは、フェルトンロードを代表するシャルドネです。砂礫が特に密で水はけのよいブロック2の土壌から生まれ、純粋な果実と緻密なミネラル感、そして長い余韻が特徴です。2025年の訪問で、参加されたお客様のひとりがこのワインを口にした瞬間に涙されました。言葉よりも先に体が反応するほどの美しさを持つワインです。
ブロック6 シャルドネは、ブロック2とは異なる土壌の性格から生まれます。より豊かなテクスチャーと果実の厚みが特徴で、ブロック2が「繊細さと緊張感」であるとすれば、ブロック6は「豊かさと包容力」と表現できます。飲み比べると、同じ畑でありながらこれほど違うのかという驚きがあります。
ピノノワール
バノックバーン ピノノワールは、複数ブロックのブレンドです。赤果実の華やかなアロマとなめらかなタンニン、セントラルオタゴらしい凝縮感とエレガントさが同居します。
ブロック3 ピノノワールとブロック5 ピノノワールは、単一ブロックの個性を純粋に表現したワインです。ブロックごとに土壌の組成や標高が異なるため、同じピノノワールでも香りの広がり方、タンニンの質感、余韻の長さに明確な違いが出ます。同じヴィンテージで飲み比べると、バノックバーンという土地の多様性がよくわかります。
コーニッシュポイント ピノノワールはバノックバーンから離れた畑のワインで、ダークフルーツのニュアンスとスパイスの余韻が特徴的です。カルヴァート ピノノワールは骨格がしっかりしており、熟成ポテンシャルが特に高いワインです。マックミュアー ピノノワールは凝縮感と繊細さを兼ね備えた1本です。
リースリング
バノックバーン リースリングとブロック1 リースリングは、フェルトンロードのもうひとつの顔です。バノックバーンの乾燥した気候と片岩土壌から生まれるリースリングは、透明感のある酸と石油様のニュアンス(ペトロール香)が特徴で、長期熟成でさらに複雑さを増します。ドライリースリングは糖分をほぼ完全に発酵させた辛口スタイルで、和食との相性も抜群です。

Cave de Uとフェルトンロード——2度の訪問から
私がフェルトンロードを初めて訪問したのは2024年6月、ニュージーランドの冬でした。ブドウの木がすべて葉を落とし、枝だけが空に向かって伸びる季節です。案内してくれたブレアは、休眠中の畑を歩きながら、一つひとつのブロックの土の違い、石の大きさ、水のはけ方を語ってくれました。
その日、リリース前のニューヴィンテージのピノノワールとリースリングをテイスティングさせていただきました。「まだ日本には届いていない。あなたがこのヴィンテージを飲んだ最初の日本人です」——ブレアはそう言って、少し誇らしげに笑いました。

2度目は2025年10月、お客様をお連れしての訪問でした。春のバノックバーン、発酵中のタンクの音、そしてブロック2のシャルドネで涙した参加者の姿——その一日の詳しい記録は、以下の訪問記にまとめています。
Cave de U でフェルトンロードのワインを購入する
Cave de Uはヴィレッジセラーズを通じてフェルトンロードのワインを取り扱っています。バックヴィンテージについても、少量ですが取り扱いがある場合がございます。熟成を経たフェルトンロードのピノノワールやシャルドネは、現行ヴィンテージとはまた異なる表情を見せてくれます。
ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
フェルトンロードのワインを購入する
ブロック別の個性をぜひ飲み比べてみてください。
FELTON ROAD
ブロック3 ピノノワール
準備中
FELTON ROAD
ブロック5 ピノノワール
準備中











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