なぜトリニティ・ヒルのシャルドネとシラーは特別なのか——ギムレット・グラヴェルズという土地の力

ホークスベイのワイナリーを巡っていると、何度も同じ言葉が出てきます。「ギムレット・グラヴェルズ(Gimblett Gravels)」。

この名前は、単なる産地の呼称ではありません。ニュージーランドのワイン地図の中でも、特別な意味を持つ土地の名前です。そして、その可能性を最も深く掘り下げているワイナリーのひとつが、トリニティ・ヒルです。


目次

ギムレット・グラヴェルズとは何か

ホークスベイ市街地から少し西に入ったあたり、かつてナルロロ川が流れていた場所があります。川は100年少し前に突然干上がり、流路を変えましたが、その跡地には大量の砂利と小石が積み重なったままになっています。

この川跡の砂利地帯が「ギムレット・グラヴェルズ」です。エリア全体は約800ヘクタール、その中でワイン産地として認定されているのは一握りの区画に限られます。

砂利土壌の最大の特徴は、水はけの極端な良さです。雨が降ってもすぐに地下へと浸透し、ブドウの木は常に「適度な水ストレス」にさらされます。ストレスを受けた木は根を深く伸ばし、凝縮感のある少量の果実を実らせます。同時に、砂利が日中の太陽熱を蓄え、夜間に放射することで、ブドウの熟成をゆっくりと後押しします。

100年ちょっと前まで川だったところが、ワイン畑になっているという土地は、世界的に見ても非常に珍しく、注目されている土地でもあります。

この土地で特に実力を発揮するのが、シャルドネとシラーです。


3つの畑が生む、3層のシャルドネ

トリニティ・ヒルはギムレット・グラヴェルズ内に3つの自社畑を持っています。

**「125」(8ヘクタール)**は最初に開拓した畑で、シャルドネの主産地です。畑名は、ギムレット・ロード125番地に由来します。かつての川の流れによって砂やシルトが積もった区画もあり、同じ畑の中でも土壌が複雑に変化します。

**「ギムレット・エステート」(17ヘクタール)**は主にシラー畑。1994年植えの古木区画を含み、トップ・シラー「オマージュ」はここから生まれます。

3番目の丘陵畑は、南からの冷風を丘が遮る温かい区画で、同じ品種でも2週間早く熟します。急斜面はドローンで農薬散布を行っています。

このような畑構成から、トリニティ・ヒルのシャルドネは3段階のラインアップで展開されています。

ワイン 特徴
ホークスベイ シャルドネ ステンレスタンク主体、フレッシュでアクセスしやすい
ギムレット・グラヴェルズ シャルドネ 125番地ブロックの果実、樽発酵で複雑さと凝縮感
125 シャルドネ 単一畑の最良区画から、10年以上の熟成ポテンシャル

「濁りを発酵させる」という哲学

トリニティ・ヒルのシャルドネ醸造で最も印象的なのは、果汁の扱い方です。

多くのワイナリーでは、プレス後の果汁をいったんタンクで静置し、澱を沈殿させてからクリーンな状態で発酵させます。しかしトリニティ・ヒルでは、最上位ワインほど「プレス機から直接、澱ごと樽へ」という手法を採ります。

果汁の濁り度(タービディティ)を数値で管理し、濁りの高い果汁ほど複雑なミネラル感と繊細な還元的ニュアンスが生まれると確信しているからです。発酵に用いるのは蔵付きの野生酵母のみ、マロラクティック発酵も自然任せ。添加物は熟成中のごく少量の亜硫酸のみという哲学です。

樽は500リットルのパンション(大樽)を主体に使い、バリック(225リットル)も組み合わせます。オーク由来の風味を抑え、あくまでシャルドネ本来の果実とミネラルを前面に出すためです。


オマージュ——30年の老木が生むシラー

トリニティ・ヒルのシラーで特別な位置を占めるのが「オマージュ」です。

1994年植えの約1ヘクタールの古木区画から、年間わずか数百ケースのみ生産されます。収量は少なく、凝縮した果実が得られます。

熟成には大型オーバル樽(楕円形の大樽)を使用します。「シラーはすでに香り豊かで美しい。小さな新樽のオーク香を重ねると、ワインが隠れてしまう」。それよりも、わずかな酸素の供給でワインを生き生きと保ちながら、ゆっくり育てていくことを選んでいます。

スクリューキャップへの移行は、ホークスベイ・シャルドネが最初、ギムレット・グラヴェルズ、そして最後にオマージュが2018年に移行しました。「スクリューキャップの下でも、ワインは確実に長期熟成します」とワインメーカーのウォーレンは言います。


ヴィンテージについて

2024年と2025年は「非常に優れたヴィンテージ」です。特に2024年は収量が少ないながら凝縮感が高く、酸も豊かで、シャルドネ・シラーともに長期熟成が期待できる仕上がりです。

2023年はホークスベイにとって記録的な困難な年でした。大雨と低温の影響で、トリニティ・ヒルでは赤ワインをほぼ商品化しなかったといいます。

「2023年のトリニティ・ヒルの赤は市場に出ません。2024年に直接移行します」。


ニュージーランド・シャルドネはなぜ「バーゲン」なのか

「ブルゴーニュが高騰し、カリフォルニアやオーストラリアのシャルドネも値上がりしている。良質なニュージーランドのシャルドネは、まだ本当の価値に比べてお求めやすい」——ワインメーカーのウォーレンはそう話します。

ギムレット・グラヴェルズの土壌が持つ自然な酸と、冷涼な気候が与えるフレッシュさ。それに野生酵母発酵による複雑さが加わると、世界のどの産地とも異なる個性のシャルドネが生まれます。

トリニティ・ヒルのシャルドネを、ぜひ一度試してみてください。


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ギムレット・グラヴェルズが生む、シャルドネとシラーの全ラインアップ。

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砂利の大地を車で駆け抜けた朝——ホークスベイ、トリニティ・ヒル訪問記

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